連綿と紡がれ続ける想い。産まれては死に、そしてまた生まれる命。
人の一生は短い。
風前の灯が如く、消えるは容易い。
故に誰もが願う。
無病息災
不老長寿
儚きを知るが故に守らんとする。
――だが。
面白いものだな。
己が身を案ずる者が多いと思いきや、どうもそうでもないらしい。絵馬の願を見れば意外と他者の健康を願うものが大半を占める。
子を想う母。
老婆を想う孫。
曾孫を想う老夫婦。
形は人それぞれにして、想いは変わらぬ。
想いや願いといったものは、程度の差こそあれ行き着くところは同一なのだろう。
此の頃世相は随分と荒んでいるようだ。風を読めば忌まわしい匂いが幾らでも嗅いで取れる。
欲望、憎悪、怨恨、嫉妬…
昔も昔とて多くの問題を抱えていたが、近年の空気は酷い。大気でさえも澱んで見える。
――だが。
何故であろうな。
こんなにも氣がケガレていては社も無事では済まぬのが道理だが。何故か境内の氣は穢れを知らぬ。
清き願は氣を清める。
如何に世が荒もうと人の願いは変わらぬという事だろう。
人は醜い。
人は過ちを犯す。
人は悔い改められぬ。
されど、人は非道にもなり切れぬ。
人の想いの在る限り、神もまた滅びぬのだろう。
もしも滅ぶような事在れば、それこそ神にもこの國にも存在価値は無い。
世は変わる。
されど変わらぬものも在る。
変える必要など無きものも在る。
何もせずとも良い。
守られるべきものは、
絶える事無く受け継がれていくものだ
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