『 幻狼幻想物語組曲 』
  第三楽章 ― 東雲 ―

 〜 Dream of Harvest tail 〜
   [ 狐色の追憶 ]

   track04 ‹Endless Yesterday›



 いつまでも続く後悔
 心の秒針は止まったまま
 僕はきっと永遠に
 あの日から卒業できない



 死んでしまった運命を復元する事なんてきっと出来ない。少なくとも僕には、そんな方法思いつかない。人は一度墜ちればどこまでも堕ちていく。
 彼も昔は大空を駆けていたのだろう
 でもそれも、今はもう過去の事

 僕の、せいだ…



 あの頃の僕は世界を知らなかった。それよりも何よりも自分を知らなかった。未熟な精神と身体で、それでも何かしようと気持ちばかりが前に前にと焦っていた。
 僕がやらなければ誰にも出来ないと思っていたんだ
 僕しかいないと思っていたんだ

 でも、そんなのはただの思い上がりに過ぎなかった。散々傷付いて、散々傷付けて、その後でやっと思い知った。
 僕はちっぽけだ
 これ以上無く、ちっぽけな存在だ、と

 僕が秋の月だとするのなら、彼は夏の太陽のような人だった。強引で我侭で、それでも誰かを惹きつける魅力を持っていた。そしていつも大勢の人の真ん中にいた。そんな人だった。
 最初は僕もその「大勢」の中の一人に過ぎなかったんだろう。
 月日の流れがいつしかそれを変えていった。
 太陽にも太陽の悩みがある事を知った。太陽で在る為に手放したものがある事を知った。
 だから思った。
 僕にしか出来ない事をしようと

 ただ、それも長くは続かなかった。
 いつからか想いはすれ違い、何かが崩れていった。歯車は一度噛み合わなくなったら身を削っていく。それでも一度回りだした運命は止められない。
 原因は一体何だったのか。心当たりはいくつもある。
 ただ、一番の原因は何よりも僕自身なんだろう。強すぎる運命の回転に、僕は耐えられなかった。ひび割れて欠けて拉げて潰れて。それでも異音を奏でながら運命は廻り続けた。

 そして歯車は弾け飛んだ



 一つの運命が、そこで終わった



 交わした約束はその時に破られた。夢見た将来はその時に消え去った。願った想いはその時に壊された。
 他の誰でもない、僕の手で

 僕は裏切った
 僕は一つの運命を破壊した
 僕は一人の人間を地の底まで突き落とした
 そして僕には過去を清算するだけの力なんてなかった
 僕は一生恨み続けるだろう
 自分の無力を
 自分の愚かさを

 気持ちだけで何とでもなると思っていた日々
 僕はそんなあの頃の自分が、他の誰よりも憎いんだ




BGM : 壊されたお守り - soud from "SOUND HOLIC" 〜 風 -KAZE-