死んでしまった運命を復元する事なんてきっと出来ない。少なくとも僕には、そんな方法思いつかない。人は一度墜ちればどこまでも堕ちていく。
彼も昔は大空を駆けていたのだろう
でもそれも、今はもう過去の事
僕の、せいだ…
あの頃の僕は世界を知らなかった。それよりも何よりも自分を知らなかった。未熟な精神と身体で、それでも何かしようと気持ちばかりが前に前にと焦っていた。
僕がやらなければ誰にも出来ないと思っていたんだ
僕しかいないと思っていたんだ
でも、そんなのはただの思い上がりに過ぎなかった。散々傷付いて、散々傷付けて、その後でやっと思い知った。
僕はちっぽけだ
これ以上無く、ちっぽけな存在だ、と
僕が秋の月だとするのなら、彼は夏の太陽のような人だった。強引で我侭で、それでも誰かを惹きつける魅力を持っていた。そしていつも大勢の人の真ん中にいた。そんな人だった。
最初は僕もその「大勢」の中の一人に過ぎなかったんだろう。
月日の流れがいつしかそれを変えていった。
太陽にも太陽の悩みがある事を知った。太陽で在る為に手放したものがある事を知った。
だから思った。
僕にしか出来ない事をしようと
ただ、それも長くは続かなかった。
いつからか想いはすれ違い、何かが崩れていった。歯車は一度噛み合わなくなったら身を削っていく。それでも一度回りだした運命は止められない。
原因は一体何だったのか。心当たりはいくつもある。
ただ、一番の原因は何よりも僕自身なんだろう。強すぎる運命の回転に、僕は耐えられなかった。ひび割れて欠けて拉げて潰れて。それでも異音を奏でながら運命は廻り続けた。
そして歯車は弾け飛んだ
一つの運命が、そこで終わった
交わした約束はその時に破られた。夢見た将来はその時に消え去った。願った想いはその時に壊された。
他の誰でもない、僕の手で
僕は裏切った
僕は一つの運命を破壊した
僕は一人の人間を地の底まで突き落とした
そして僕には過去を清算するだけの力なんてなかった
僕は一生恨み続けるだろう
自分の無力を
自分の愚かさを
気持ちだけで何とでもなると思っていた日々
僕はそんなあの頃の自分が、他の誰よりも憎いんだ
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