降り立った地は何処でもない場所。わたしだけの空間。中途半端に作りかけのラクエン。
最近は特に手を入れていない。建設はサボりがちだった。
いけないな、と思う。
わたしが手を入れていなければ芝一つ生えはしない。虫一匹生まれはしない。わたしが面倒を看なければ完全に停止してしまう世界。
わたしだけの世界。
いつからだろう。気付いたらココの構築に夢中になっていた。
昔は酷く歪な世界だった。改良に改良を重ね、今ではそれなりにマトモになりつつある。それでもまだまだ完成には程遠い。いくらでも手を加えるべき場所はある。
目を閉じる。呼吸を整え、再び目を開く。
世界が変わっていく。そしてわたし自身も変っていく。
真っ暗な世界に白い線で輪郭が描かれる。高速で描かれた複雑な地形は、瞬時にして着色され緑あふれる渓谷になった。蒼穹には雲が現れ遠洋の向こうに朝日も姿を見せる。そして街が構築され、様々なオブジェクトが姿を現し、灰色の人々が息を吹き返す。
世界に血が巡っていく。
世界が動き始める。
おはよう、わたしの愛しい世界。
手を伸ばす。光が体を覆う。振り払えばそこには本来の姿が現れる。わたしの在るべきカタチが。
背中に現れた機械仕掛けの翼を駆って、目覚めたばかりの風の中に飛び出す。
さぁ、今日はどこから始めよう。どこから手を加えよう。
今日もまた思うままに世界を変えていく。
今日もまた思うままに世界を紡いでいく。
今この胸にある熱が冷めてしまうその前に
出来損ないの神の名を背負って
わたしは今日も虚無と対峙し、世界を虹色のペンキで塗り替えていく。
この命が燃え尽きる前に、ラクエンを創り上げるために。
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